船級協会とは
船級協会というのは、船が十分な強度を持つように設計されているか、設計どおりの材料を使っているか、正しく建造されているか、ルールに基づいた性能や設備を備えているかなど、船の安全性を客観的に検査・評価し、証明書を与える権限を国から任された民間の検査機関(認証代行機関)です。
英語ではClassification Societyといい、通称Class(クラス)と呼んだりもします。
以下、船級協会誕生までのお話です。
ロンドンの喫茶店から始まった
17世紀後半、イギリス・ロンドンに1件のコーヒーハウス(喫茶店)がありました。エドワード・ロイド(Edward Lloyd)さんという人が店主でした。
ロイドさんのお店はテムズ河の船着き場の近くにあったため、船主や荷主、海運業者といった船の関係者が連日お店を訪れました。そうすると自然と船の情報がたくさん集まります。海難事故の情報や出入港の情報、積み荷の取引情報など、常にホットな情報が行き交いました。
ロイドさんはこれらの情報をまとめ、週に1回「Lloyd’s List(ロイズ リスト)」という新聞を発行し始めたので、お店はますます業界人たちのたまり場となりました。
特にそのころのイギリスでは海上保険制度が確立されていたので、保険業者や保険引受人も情報交換のためにお店に通うようになり、ついには商談の場として定着しました。(海上保険の成り立ちについてはこちら→『損害保険は船の冒険から始まった』)
その後、現在の世界最大の保険市場「ロイズ(Lloyd’s)」へと発展していったのです。
ロイド船級協会の誕生
さらに、保険の対象となる船舶を、国や船主・荷主・海運業者などから独立した第三者の立場で検査・評価する「ロイド船級協会(Lloyd’s Register of Shipping)」が設立されました。世界最初の船級協会です。
ロイド船級協会は各船舶の安全性を評価した結果、各船舶に等級(船級、Class)を与えて分類し、船舶登録簿を発行しました。客観的な査定は保険業者にとって重要な情報であり、船舶側としても安全性を確立させるきっかけとなりました。
現在、世界の船級協会
いまではイギリスのみならず世界中に船級協会があります。そして、現在の外航商船は必ずどこかの船級協会の承認を受けており、それに基づいて保険契約をして運航しています。
これから新しく造る船に対してどこの船級協会を選ぶかは、船主が決めることができます。(船主・運航会社の国や旗国の船級を選ぶことが多いと思います)
各船級協会はおよそ同じようなルールで検査・評価しているため、船級協会が違っても安全性に違いはほとんどなく、互いに信頼もしあっています。
本部 | 名称 | 略号 |
イギリス | Lloyd’s Register of Shipping | LR |
フランス | Bureau Veritas | BV |
イタリア | Registro Italiano Navale | RINA |
アメリカ | American Bureau of Shipping | ABS |
ノルウェー | DNV GL (ノルウェーのDet Norske Veritas + ドイツのGermanischer Lloydが合併) | DNVGL |
日本 | Nippon Kaiji Kyokai (日本海事協会) | NK |
ロシア | Russian Maritime Register of Shipping | RS |
中国 | China Classification Society | CCS |
韓国 | Korean Register of Shipping | KR |
各国の船級名称を見ていただくとわかると思いますが、「Classification Society」のほかに、「Register」(登録簿)や、「Veritas」(真実・真理)といったワードがよく使われていますね。
【参考】・「再保険の進化と最近の再保険市場」損保ジャパン総研レポート
http://www.sompo-ri.co.jp/issue/quarterly/data/qt61-2.pdf
↑巨大なリスクを引き受ける仕組み、ロイズの「再保険」制度の歴史~現在について詳しく書かれています
・『マリタイムカレッジシリーズ 船舶の管理と運用』商船高専キャリア教育研究会編 海文堂
・『よくわかる最新船舶の基本と仕組み 第2版』川崎豊彦 秀和システム
・「海上保険の歴史」東京海上日動 HP
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/marine_site/info/history.html
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