船ができあがるまでの流れ
船は、車などの同型大量生産と違って、一品ずつオリジナル仕様の受注生産品です。(2番船、3番船など姉妹船を作るケースもありますが、それでも改善も含め少しずつ仕様が異なります)
お客様(船主)が望む速度・大きさ・種類の船を、なるべく他社よりもコスト・品質・納期の面で魅力的なプレゼンをし、受注を獲得します。
それから設計が始まり、必要資材を発注したら、現場での船づくりがスタートします。

巨大ビルほどもある大型船はいったいどのようにして作られるのでしょうか。現代で主流の「ブロック建造法」に基づいて説明します。
船殻(せんこく)と艤装(ぎそう)の工事
船をつくる工事は、ざっくり言えば「船殻」(Hull)と「艤装」(Outfitting)に分けられます。
「船殻」は船の器(ドンガラと呼ばれます)で、「艤装」は取り付け品だと考えてください。そして多くの場合、船殻は造船所で作られ、艤装品は協力メーカーへの発注品(購入品)となります。

※「船殻」は、文字通り、船の”殻”なので、卵の殻のようなイメージを持ってもらうと分かりやすいかと思います。
※「艤装」の”艤”は見慣れない漢字ですが、”航海に必要な準備”のような意味があります。器だけでは船は走れませんから、航海するうえで必要になってくるすべての装備品が艤装品と考えてください。
船づくりは、まず船殻づくりから始まります。
船殻の工事(ブロック建造法)
1.鉄鋼板を設計通りの寸法で切断します。NC(Numerically Controlled)切断機を使って自動で精度よく切断ができます。
2.溶接で繋げたり曲げたりして加工し、まずは小さなブロックを作っていきます。(小組といいます)
3.小組ブロックをいくつか組み合わせて、中くらいのブロックを作っていきます。(中組といいます)
4.中組ブロックを組み合わせて、大きなブロックにしていきます。(大組といいます)
5.いよいよドックにて、大組ブロックをクレーンで組み合わせて船の形にしていきます。(総組といいます)
※造船会社によって、大組・総組などの呼び方は異なることがあります

鉄鋼板は溶接でつなげていきます。人が手作業で溶接したり、溶接ロボットが溶接したりします。
後からでは取り付け困難な狭い箇所や天井部分の配管・部材等は、小さなブロック段階で先に取り付けておきます。これを「先行艤装」といいます。また、エンジンなどの巨大な機器類も後から搭載するのは困難になるので、総組段階で空からクレーンで搭載します。
船の器が大部分完成したら、水に浮かべることができますので、進水式・命名式を行います。この段階で見た目はもう立派な船ですが、まだ中身は空っぽの状態です。これから、船の機能に必要なさまざまな機器・装備品を取り付ける工事を行っていきます。
艤装の工事
艤装工事の区分は造船所によって少しずつ異なりますが、およそ以下の内容になります。
・配管艤装
→配管(パイプ)の取り付け、配管周り断熱・防熱材の取り付け
・甲板艤装、鉄艤装
→係船装置、荷役クレーン、救命装置、交通装置(はしご)などの取り付け
・居住区艤装、内装
→居住区(建物自体)の取り付け、空調設備・ダクトの取り付け、防火扉・窓の取り付け、厨房・洗濯室・各部屋などの床壁天井施工、断熱・防熱材取り付け、振動騒音対策、家具納入他
・機装
→機関室内の機器・配管取り付け、機器台や必要部材の取り付け
・電装
→電装品の取り付け、配線
・塗装
→船底・船体の表面磨き、塗装、防食アノード取り付け
試運転
完成したらいよいよ実際の海で試運転(Sea Trial)です。
船主や船級協会、船種によって必要とされる国の検査機関の人などが共に乗り込んで、数日間航海に出ます。
スピードテスト、各装置の動作確認など、たくさんの性能試験を行います。
引き渡し
正式に船主へ引き渡されます。嬉しいような寂しいような、感慨深い瞬間です。
海運関係の会社に勤務していますが、知らないことも多く勉強になります。今後の更新も楽しみにしております!
ありがとうございます!とても励みになります。今後ともよろしくお願いします。