命がけの大冒険時代
大昔、紀元前4世紀ごろのギリシャでは、すでに海上交易が盛んでした。船に乗って他国へ行き、物品を交換したり売買したりして無事帰ってくることができれば、莫大な富を得ることができました。
しかし多くの船は航海の途中で海難事故にあい、積み荷を失ったり沈没したりして無事に帰れませんでした。ハイリスク・ハイリターンの世界だったわけです。
冒険を支える資金制度
そこで、損害を受けた場合に補償を求める仕組みが生まれました。冒険資金を借りて航海に出て、途中で損害を受けた場合はお金を返さなくてよいが、無事帰ってこれた場合には高い利息を上乗せしてお金を返すといった仕組みでした。これを「冒険貸借」といいます。地中海を中心にこのような制度がどんどん広まっていきました。
損害保険のはじまり
ところが13世紀頃、お金の貸し借りによって高い利息を取ることはキリスト教の”隣人愛”の精神に反するとして、ローマ法王によって「利息禁止令」が出されました。すると、法の抜け穴をくぐるようにこの制度はどんどん形を変えていきました。
その1つとして、あらかじめ利息の代わりにお金を払っておき、無事航海が終わればそのままで、もし損害を受けたら補償をしてもらうという形ができました。現在の損害保険の原型です。
ちなみに、「あらかじめ支払う」という意味のラテン語はprae emereで、そこから英語のpremium(保険料)という単語が生まれました。
おまけ ~日本では~
日本でも江戸時代に同様の制度はありましたが、福沢諭吉がヨーロッパの保険制度を紹介したことで、より広く深く知られていきました。明治時代には、海上の積み荷への補償を請け負う会社「東京海上保険会社」ができました。現在の「東京海上日動」さんですね。
損害保険制度が確立されてきた頃、次はリスクを引き受けても大丈夫な船か?きちんと安全に作られたか?といった点を客観的に検査し評価する組織、「船級協会」が誕生します。大手保険市場ロイズと世界初の船級協会ロイドレジスターは同じ1件のコーヒーハウスから始まりました。↓↓↓
【参考】・『マリタイムカレッジシリーズ 船舶の管理と運用』商船高専キャリア教育研究会編 海文堂
・『よくわかる最新船舶の基本と仕組み 第2版』川崎豊彦 秀和システム
・「海上保険の歴史」東京海上日動 HP
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/marine_site/info/history.html
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