船の6自由度とは
海のうえで自由に揺れ動く船の挙動は、6つの動きに分けて考えることができます。
x軸とy軸とz軸に沿った往復運動(3つ)のほか、各軸を中心とした回転運動(3つ)を加えて、全部で6つとなります。これを船の6自由度(six degrees of freedom)と呼びます。
船の長手方向をx軸、幅方向をy軸、垂直方向をz軸とします。原点は船の重心となります。
x軸方向の往復運動:
前後揺れ surge(サージ)
y軸方向の往復運動:
左右揺れ sway(スウェイ)
z軸方向の往復運動:
上下揺れ heave(ヒーブ)
x軸中心の回転運動:
横揺れ roll(ロール)
y軸中心の回転運動:
縦揺れ pitch(ピッチ)
z軸中心の回転運動:
船首揺れ yaw(ヨー)
6自由度の呼び方を覚えよう
6自由度は通常、上で紹介したように英語で呼びます。したがってどの動きがどの呼び方だったか覚えるのが大変かもしれません。英語の意味を1つ1つ見ていくことで、イメージで覚えていきましょう。
surge(サージ)
前後揺れを表すsurge。surgeという単語は、勢いをもってある方向に進むようなイメージをもっています。
たとえば、波が押し寄せる、人が押し寄せる、というときに使います。
例1)A wave surged up towords them. 波が彼らに向かって押し寄せた。
例2)The gates opened and the crowd surged forward. 扉が開き、人々が前に押し寄せた。
いずれも進行方向の動きを表しているので、船も進行方向に前後する動きと覚えましょう。
sway(スウェイ)
左右揺れを表すsway。swayという単語は、左右にゆらゆら揺れるイメージです。
たとえば、木の枝が揺れる、というときに使います。
例)The branches were swaying in the wind. 木の枝が風で揺れていた。
船も進行方向に対して左右に揺れる動きがswayに当たります。
heave(ヒーブ)
上下揺れを表すheave。heaveは、なにかを引き上げたり投げおろしたりという上下の動きを表します。
たとえば、肩を上げて笑う、ため息を吐く、などという表現にも使います。
例1)His shoulders heaved with laughter. 彼は肩を引き上げて(上下させて)笑った。
例2)He heaved a long sigh. 彼は長いため息を吐いた。
roll(ロール)
横揺れを表すroll。rollは馴染みのある単語だと思います。トイレットペーパーや巻物など、1ロール、2ロール・・・と数えたりしますよね。長い軸に対して転がる・巻きつけるイメージです。船の長手方向を軸として転がる動きがrollに当たります。
pitch(ピッチ)
縦揺れを表すpitch。pitchは”投げる”という意味の単語です。投手のことをピッチャー(pitcher)とも言いますね。高いところから低いところへ投げ落ちるカーブのイメージです。
船も進行方向に向かって高いところから低いところへ動くイメージで覚えましょう。
yaw(ヨー)
船首揺れを表すyaw。yawは、”船や飛行機が進行方向に対して針路が逸れる”という意味で、この単語だけはほかの使い方・意味はほとんどありません。
船首がブレれば針路が変わってしまうので、船首揺れの動きをyawと呼びます。
船の性能と6自由度の関係
6自由度の動きに関連した船の性能を、船舶工学ではつぎのように表現します。
復原性(Stability)
復原性とは、船が横に傾いても戻ろうとする性能のことです。ヨットなどは復原性がとても高い船ということになります。
これにはrollの動きが関係しています。
耐航性(Sea Keeping)
耐航性とは、波による揺れに耐えて転覆せずに航海する性能のことです。
これにはheaveとpitchの動きが関係しています。heaveとpitchが激しいと簡単に船酔いしてしまいそうです。
操縦性(Maneuverability)
操縦性とは、まっすぐ走る・曲がる・止まるといった動きを安定して行える性能のことです。
これにはswayとyawの動きが関係しています。いずれも針路に関係する要素ですね。
以上、船の性能を語るときには6自由度の呼び方がよく出てくるので、覚えておくと便利です。